スマートフォンやタブレット、ゲーム機器などの充実によって、家族みんなでテレビを囲む機会がめっきり少なくなったと感じませんか?
だからと言って、家族のコミュニケーション自体が減っているのかといえば、必ずしもそうとはいえません。
昭和から平成中期の子ども部屋といえば、本を読んだり、勉強したりと、ひとりで好きなことをして過ごす場所でした。
ところが平成後期に入ってリビング学習が浸透しはじめると、子ども部屋は「夜寝るだけの場所」「自分の物を片付ける場所」(で、あってほしい)、という考え方が定着していきました。
以降、「子ども部屋はクローゼットがあって、ベッドと勉強机を置ける広さがあれば十分」と考える方が増えています。
当然、リビングも今までどおりではいけません。
大人にとっても子どもにとっても居心地のよい場所であるよう、リビングにもさまざまな工夫が求められるようになりました。
たとえば、家族と同じ空間にいながらも、互いを気にせず好きなことができるスペースを設ける。
キッチン前のカウンターや窓辺のベンチ、ヌックに畳コーナー。
その日の気分で、自分の居場所を選べるリビングです。
小上がりや間仕切りタイプの収納で、空間を緩く区切ってみるのもいいですね。
好きなことをしたいのは大人も同じですが、子育て中のパパ・ママは、なかなか個室にこもってはいられません。
それならば、書斎や趣味のスペースをあえてリビング内につくってみてはいかがでしょう。
リビングの片隅やキッチンのそばに“こもり部屋”のような空間があれば、大人でも趣味を楽しめる時間がもっと増えると思うんです。
それが本や漫画を読むことなのか、手芸などのハンドメイドなのか、あるいは今流行りの推し活なのかは、人それぞれ…。
思えば、“個の空間”というのは、昭和の時代ではごく当たり前の考え方でした。
台所や茶の間、客間など用途の決まった部屋がいくつも集まって、ひとつの生活空間を形成する。
それがライフスタイルの変化によって形を変えるうち、LDKというひとつの大きな空間になりました。
それぞれの役割を考えながら、個の空間を組み合わせてゆく。そこへ、現代の暮らしに合ったアレンジを加えてゆく。
そんな、“昔の家”と“現代の家”のいいとこ取りをしたようなスタイルで深まる、家族のコミュニケーション。
今、Z世代の間で『平成レトロ』なファッションが流行っているそうです。時代は繰り返すといいますが、それは住宅でも同じこと。
住宅における“個の空間”という概念が、今再び根を下ろしつつあるのかもしれませんね。