『フォーカルポイント』をご存じですか?
その空間に入ったとき、最初に目に入る場所のことで、昔ながらの和室では掛け軸や生け花を飾った床の間がその役割を担っていましたが、最近の住宅ではニッチやアクセントウォールがフォーカルポイントになっていることが多いのではないでしょうか。
たとえば、フォーカルポイントに薪ストーブがあると「暖かそうな部屋」という印象を受けるように、フォーカルポイントに何をレイアウトするかによって、部屋の第一印象が決まります。
もちろん、ニッチや飾り棚をつくってもよいのですが、環境との調和を大切にする永家舎では、できるだけ「自然の風景」を見せたいと思っています。
リビングへ入った瞬間、視線の先に広がる四季折々の風景。
庭の草木を見せてもいいですし、街路樹を見せてもいいでしょう。
そこにあるのが当たり前になってしまい、普段は意識することのない風景も、フォーカルポイントにあるだけで目に留まりやすくなるものです。
しかし、これが二世帯住宅になると、ちょっと難しいですね。
たとえば、庭が見えるいちばんいい場所に親世帯のリビングをつくり、フォーカルポイントに窓を配置したとします。部屋に入った瞬間、大切に手をかけた庭が目に入る、理想のフォーカルポイントです。
しかし、この庭を見せたいからといって、子世帯のフォーカルポイントに同じ風景をもってくることは困難です。
不可能ではないにしても、フォーカルポイントよりも優先させるべき事項が、リノベーションには多々あるからです。
そんなときは、フォーカルポイントに薪ストーブを置いたり、選び抜いたアイランドキッチンを置いたりすることで、部屋を印象づける工夫をします。
古民家再生では建具や欄間などの古材を再利用することがありますが、昔の欄間は手の込んだ美しいものが多いので、装飾品として用いることが多いです。
どうせなら目につく場所に飾りたいですし、きれいに洗って磨いた欄間を、玄関やリビングのフォーカルポイントに飾ってみるのはどうでしょうか。
古材を飾るというと、重厚な雰囲気になりすぎることを心配され「あまり目立たないようにしてほしい」とおっしゃる方もなかにはいらっしゃいますが、飾り方によっては十分、インテリアとも調和します。
絵画のように壁に飾ったり、照明を当てて彫刻の絵柄を浮き上がらせたり。
アンティークな雰囲気に仕上げることで、現代のインテリアにもマッチした古材のフォーカルポイントができそうですね。