古民家のリノベーションには、現代住宅のリノベーションとはまた違った難しさがあるものです。
築100年に近い、あるいは100年を超えるような建物をリノベーションして住み続けようと思うのですから、そこにはやはり建物に対する強い思い入れがあるはず。
古民家リノベーションでは、そんなお客さまの気持ちに寄り添い、本来持つ風合いや心地よさを損なわないような改修をすることが求められます。
たとえば、仕上げに使われる材料。
古民家は構造も内外装すべて、無垢の木や漆喰、土壁など昔ながらの自然素材でできています。
そこへ、安易にビニールクロスを貼ったり、合板のフローリングや建具といった新建材を使ったりすれば、どこか取ってつけたような雰囲気になってしまうもの。
だからこそ、古民家のリノベーションでは普段以上に素材にこだわり、新しくした部分と手を加えない部分を違和感なく調和させなければなりません。
また、古民家は“夏涼しく冬寒い”などといわれますが、実際にエアコンなしでひと夏越すことも可能なほど、夏の古民家は快適です。
日本の民家は、もともと風通しがいいようにつくられています。
“田の字”の間取りといわれるように、部屋と部屋が壁ではなく障子や襖などの建具で仕切られており、夏になって建具を取り外し、窓を開けると、家の中を風がサッと通り抜けてゆきます。
だから、涼しい。
昔の家は隙間が多いので、余計に風が抜けやすいというのもあるでしょう。
しかし、冬の寒さを考えると、古民家リノベーションには断熱性の向上が欠かせません。
断熱材を入れて外壁をやり替えれば、隙間風もなくなりますし、冬の快適性は向上します。建具で仕切られていたところに壁を入れることで、間取りの使い勝手もよくなります。
だけど、その分、風は抜けにくくなってしまいます。
だからこそ、本来の快適性を損なわないための工夫や努力が、一層求められます。
伝統的な日本建築のよさを大切に、現代の暮らしに合わせて手を加えていくこと。
それが、現代住宅とは違う、古民家のリノベーションなのです。