「家が片付かない」という悩みをよく耳にします。
その理由の多くは、単純に収納スペースが足りないから。もしくは、あっても使い勝手が悪く、収納をうまく活用できていないから。
実際、古民家では家が広いわりに収納がほとんどありません。そのため、和室の一間や縁側が物置と化している様子もよく見かけます。
当時、日本の住まいでは“収納=押入れ”というのが一般的な考え方で、しかも、その時代は結構長く続きました。
当時、日本にはベッド文化がありませんでしたから、夜は畳の上に布団を敷いて寝る。敷きっぱなしだとカビやダニの温床になってしまうので、朝起きたら布団を畳んで収納する。そんな生活様式から生まれたのが、押入れです。
押入れのあの深い奥行きは、布団を二つ折にしてぴったりと収納できるように設計されたものなのですね。
住宅が近代化すると、押入れ以外に納戸を設けた家が増えてきました。小さなものでは半畳分、広いものになると4畳半が丸々納戸ということもありました。
その広い収納に家中のかさばる物を収納するのですが、そこから必要な物を探して取り出したり、納戸のある2階まで行って物の出し入れをしたりするのがちょっと面倒、というのが欠点でした。
その後、西洋の文化がより広く取り入れられるようになり、待ちに待ったクローゼットの登場です。
進化は止まることなく、壁付けクローゼットからウォークインクローゼットへ。昨今では、回遊できる動線を取り入れたウォークスルークローゼットが人気を集めています。
キッチン収納も然り。かつての日本の住宅では、勝手口が土付きの野菜を置いておく収納スペースを兼ねていましたが、今ではパントリーの設置が常識になっています。
現代は、まさに収納も適材適所。
玄関で使うものは玄関に、キッチンで使うものはキッチンに。大きな収納ひとつ設けるよりも、小さくてもいいから必要な場所に必要なだけの収納を。
リビングの壁一面に壁面収納を設けたり、テレビの背面壁の裏に空間をつくって、リビングからは見えないセミオープンの収納スペースを設けたり。生活スタイルに合わせた、さまざまな工夫が求められています。
これからの収納は、どのように進化していくのでしょうか。
物を持たないミニマリスト志向が増える一方で、道具やコレクションの収集を趣味にしている人も多くいます。
そんな多様な価値観に対応できる柔軟な収納を、私たちも日々考えていきたいと思っています。