家は、住む人が自然環境から身を守り、寝食をするための場所。
それと同時に小さな社会や文化を形成する場所でもあり、昔の家には来客をもてなすための和室や応接室が必ず用意されていたものでした。
時代は変わり、今では客間のある家を見かることもほとんどありませんが、ここ数年の間に、家はまた新たな価値を求められるようになっています。
それは、 “仕事”や“趣味”など、暮らしそのものを楽しむための空間づくり。
実際にあった例を、ひとつ挙げてみましょう。
お施主さまはセミプロとして活動する音楽家のご夫婦で、奥様は声楽、ご主人はピアノやギター、ボンゴといった楽器を演奏されていました。
ご要望は、家全体をリノベーションするなかで、新たに音楽室をつくりたいというもの。
音楽室というと、その場で演奏するだけでなく、楽器や機材を保管しておけるだけの広さも必要ですし、音響や防音のことも考えなければなりません。
その辺りの仕様に関しては、有孔ボードを使うなどして解決できますが、問題はデザインです。
音楽に集中できる環境でありながら、気分の上がるデザインとはどういうものなのか。
頭で考えてもなかなか答えは出ないものですが、そのときたまたまプライベートで見学に行った『TAKIGAHARA FARM』でインスピレーションをもらい、提案した案を採用いただきました。
『TAKIGAHARA FARM』は古民家や蔵を改装してつくった農園施設で、カフェやバーのほか、宿泊施設も併設されています。
そこからイメージしたのは、黒一色の壁と天井に真っ赤なドアという、シックでモダンな内装でした。
永家舎へリノベーションの相談に来られるのは、「ただ使える空間があればいい」というのではなく、デザインも機能性も妥協しない、こだわりを持った方々です。
そんなお客さまの希望を、どこまで叶えられるのか。
お客さまの想像を超える提案ができるのかどうか。
プレゼンの場は私たちの手腕が試される瞬間でもありますが、
「永家舎なら、どんなマニアックな要望にもとことん付き合ってくれる」
最終的にそんな評価をいただけたら、うれしいですね。