日本の住宅寿命は、海外諸国に比べて極端に短いといわれています。
これは、戦後の高度経済成長期におけるスクラップ&ビルド(壊しては建てる)の常態化が原因とされ、その結果、近年では空き家の急増が問題視されるようになっています。
そして、2009年6月には「長期優良住宅」の認定制度がスタート。
「質のよい住宅を、手を加えながら長く住み継いでいく」ことを目的とした制度です。
もちろん、長く住み続けるうえで耐震性・断熱性といった性能面の向上は必須です。
しかし、性能だけでロングライフを実現することは、現実的には難しいのではないでしょうか?
ご存じのことと思いますが、住宅寿命が短いといわれる日本にも、実は100年住宅が存在します。「古民家」や「町家」といわれる建物です。
日本古来の民家は希少な国産材を使用し、当時の職人さんの技術力を結集してつくり上げたもの。
そうした建物が残る景観地区や風致地区の街並みは、石材や漆喰・モルタルなどの素材を使った建物が居並ぶ海外の街並みにも決して引けを取りません。
つまり、本当のロングライフを実現するためには、性能面の向上だけでなく素材感のある美しさを取り入れることが必要なのだと、私どもは考えています。
当時の梁や桁、柱、そして床材といった希少な材料に、無垢材や塗り壁といった自然素材を合わせ、家を建てた当時の美しさ・風合いを残しながらデザインしていく。
ずっと住み続けたくなる家をつくるためには、間取りや設備・使い勝手など生活スタイルに合ったトレンドを取り入れつつも、日本人が美しいと感じるものを残していくことが大切なのです。
そして、目に見えるもの・形として残るものだけでなく、ご先祖様の思いやご家族の思い出といった大切なものも残していく。
そんなリノベーションができればいいなと思っております。